2018/04/07

終わった恋の隠し場所 ~怪物しか愛せない~


今回も私が語っていきます。私の視点。




ユリアと最後に会ったとき、ショウという男の話になった。

彼女の新しい彼氏。

プロの作曲家の弟子みたいな感じで、シンガーソングライターをやってるらしい。

もちろんそれだけでは食べていけず、ビルメンテナンス会社で契約社員として働いていると言っていた。

夢追い人。でも現実性もある。

動画を見せられた。その彼氏がソファに座ってギターを弾きながら歌を歌っているところ。

切れ長の目。細くて高い鼻。色白。ちょっとハーフっぽい。そして甘い歌声。

動画を撮られてることなんてまるで気にせず、自分の世界に浸り込んでいる感じ。

不思議な雰囲気。

人の心を惹きつける何かを持っている。

ハルトを太陽にたとえるなら、このショウという男は月、もしくは月夜のような、夜全体のような男に思えた。

そのとき見せられた動画やユリアの話からだけでは、どういう人物なのか判断がつかなかった。

少なからず、悪い人には思えなかった。

でもユリアは別れたがっていた。

彼のことを怪物と言っていた。





「だったら別れたほうがいいんじゃない?」

と言いかけたけど、言えなかった。

そこまで無神経になれなかった。

それはユリアが決めること。

彼女が本気で別れたいと思えば、別れるだろう。

私が介入することじゃない。ハルトのときみたいに。

あんなのはもういやだ。

私のせいで誰かと誰かを引き離してしまう。

誰かを傷つけてしまう。

そんなのはもういやだ。




それよりも、どんな男にしろ、ユリアに新しい恋人ができたことはいいことのように感じていた。

ハルトを失って、ダメになってしまうんじゃないかと心配していたから。

新しい恋人ができた=前進している、そう思っていた。

ただ唯一不安だったのは、ユリアとハルトが別れていた半年間、私とハルトが密かに会っていたことが、ユリアに知られていないかということ。

私がハルトを好きだったことに、ユリアが勘づいていないかということ。

つまり、私がユリアを裏切っていたことがバレていないかということだった。

結局、私は自分の心配ばかりしていた。

自分ではうまく立ち振る舞っているつもりでも、ユリアには見抜かれているという気がしてならなかった。

そのせいで、彼女が抱えている闇に少しも気づくことができなかった。

彼女が身動きできない状態なのに、ずっと目をそらしていた。

彼女と正面から目を合わすことができなかった。

目を合わせた瞬間、私の嘘が、私という人間の醜態がすべて暴露されてしまうにちがいなかった。

一番大切にしたい友達の前で、私は常に不誠実だった。

ああ、私はどうして親友の恋人を奪うようなまねをしたんだろう?

どうして二人を引き離してしまったんだろう?

私は自分が怖かった。

それでいて、そのおそろしいという感情を楽しんでいるようでもあった。

自分のしていることに惚れ込んでいるみたいだった。

もし、私のすべてを知って、私を深く愛せる人がいるとしたら、その人はきっと怪物だろうと思った。

怪物なら私を愛し、私も愛せると思った。

ユリアの新しい恋人・ショウに、私は興味を抱きはじめていた。












はじめから読む:『終わった恋の隠し場所 ~恋愛ではない何か~』

前回に戻る:『終わった恋の隠し場所 ~半年間の空白を楽しんでいたのは誰?~』

続きを読む:『終わった恋の隠し場所 ~変わり果てた友人との再会~』






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