2017/05/24

村田沙耶香『コンビニ人間』のレビュー



 社会に対する自身の中で生じるズレをまったく気にせずに生きている人なんていないんじゃないだろうか?




 誰しもが、「なんで世界ってこんなふうなんだろう?」、「なんかちがうな」、「自分がおかしいだけなのかな」などと多かれ少なかれ日々違和感を募らせながらどうにかこうにかやりすごしているにちがいない。

 それを思うと、この作品に書かれていることはそれほど突飛なことでも異質なことでもない気がしてくる。

 その点で、私はこの作品の主人公をなんとなくだが励ましたくなった。

 まるで人間じゃないもの、人間の形をした中身は空っぽの化け物、みたいに極端に描かれているけれど、主人公が世間離れしていればいるほど、でもさ、あのさ、そもそも世間ってなんなんですかね?みんなが思うところの普通ってなにさ?てか、みんなって誰?などと子どものように意地を張って問いただしたくなる。

 そして世間をぎろっと見定めたところで、私自身、よくもまぁその世間とかいうやつにうまく適合するためにさまざまな術を身につけてきたもんだな、ずいぶんといろいろなズルや芸をまるで安い仮面でもかぶるようにやりこなしてきたな、自分で思うところの『世間から見て怪しまれない自分』を演じてきたもんだな、なんて思いはじめる。






 コンビニだけが自分の役割を教えてくれる場所だと気づく主人公。

 えらいじゃないか。十分じゃないか。

 自分の役割などよく分からない人のほうが多いんじゃないかな。

 私だって胸を張ってこれだと言えるようなところにはいない。
 
 全然いない。

 それでも容赦なく時間は過ぎていく。人としての責任を追及されたりもするし、自分で追い込むこともある。

 生きる窮屈さは歳を追うごとに増していくばかりだ。

 誰かの役に立つということだけが人として認められることの前提であると考えてしまうと、人生は急に苦しいだけのものになってしまいかねない。

 自分自身の評価は、自分が他者から(外界から)受ける評価には関係ない、そう思いたい。

 おそらく社会の中で生きていて感じる違和感というのは、自己に対する『あなたと私』の見方の差なのだろう。

 いつでも、いつまでも、私らしくいよう。この作品を読んで改めて思った。



Well it's too late

Tonight

To drag the past out

Into the light

We're one

But we're not the same
We get to carry each other
Carry each other
One...



今夜はもう遅い

こんな時間から過去をさらけだしてあれこれいっても仕方ない

みんな同じ「人間」だけど,だからって「同じ人間」でなくてもいい 

それぞれ違うのが当たり前で

だからこそ,お互いに支え合わなきゃならない

助け合わなきゃならないんだ
みんな「人間」なんだから...